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居住権を主張できるか

ご相談内容

3年前から、賃貸借契約を締結し、戸建てを貸していますが、賃料の支払いが滞り、また使用方法について契約内容に反する行為があり、退去を申し立てたところ借り主が「居住権があるから退去しない」と主張します。
居住権とは何でしょうか。またその居住権で借り主の意見は主張できるのでしょうか

論点の整理

  1. 居住権とは
  2. 賃貸借契約における借り主の権利とは
  3. 借り主に退去してもらうためには

考え方

1.居住権とは
居住権という権利は法律用語ではありません。
即ち、借り主は法律上存在しない権利では自己の権利を何ら主張できないこととなります。

しかし、一般的によく「居住権」という言葉が使用されます。そこでこの意味を大辞林で調べると「居住者が継続して家屋に居住する権利」とあります。
この居住する権利とは、どのような場合に発生するかを考えてみますと、所有権占有権賃借権使用貸借権があります。
ご相談の場合は、賃貸借契約に基づいて居住が開始されているから、居住権とは、「賃貸借契約に基づく借り主の権利」と解釈することとなります。
2.賃貸借契約における借り主の権利とは
借り主の権利を検討するには、貸し主の権利義務と借り主の権利義務を確認する必要があります。
次の表の賃貸人の義務は賃借人の権利であり、賃借人の義務は賃貸人の権利になります。
  義     務  
賃貸人    使用収益をさせる義務  賃借人が使用できない場合、賃貸人はその措置をする必要がある。
例えば、賃貸人は、賃借人が目的物を使用するに際して、それを妨害している第三者がいる場合には、これを排除しなければならない
 修繕義務  賃貸人には、目的物の使用収益に必要な修繕をする義務がある。例えば、賃貸している家が雨漏りするならば、それを修理するのは賃貸人の義務ということになる
 費用償還義務  賃貸人は、賃借人が支出した必要費および有益費を償還しなければならない。
必要費とは、目的物を使用収益できる状態を維持するために必要な費用のことをいう。(例えば、雨漏りがあり、それを修繕する)
有益費とは、目的物の改良のために支出した費用をいい、契約の終了時に実費か改良による価値の増加額を賃貸人が償還しなければならない。(例えばトイレを和式からシャワートイレにする)
賃借人    賃料を支払う義務  滞納は契約解除の当然の理由になるが、数日遅れたからといって解除になるわけでない。
 契約終了時に目的物を原状回復して返還すべき義務 原状回復とは、目的物を契約前の状態に戻すことである。通常の方法で使用収益していた場合以上に目的物が傷んでいたときには、それを修復し、あるいはその分の損害を賠償する義務がある。 
 無断譲渡、無断転貸し、用途変更の禁止 賃貸人の承諾を得た場合はいいが、賃借人が第三者に目的物を売ったり、貸したりできない。
また、用途変更、例えば住宅で借りた家屋を店舗として使用することはできない。 

借り主は、上の表の賃借人の義務に違反した場合は、契約違反になります。
違反ということは契約期間内であっても契約の解除、即ち契約が無効の状態になることです。
従って立ち退きをしなければならず、この場合、居住権でもって貸し主に対抗することはできません。
3.借り主に退去してもらうためには
貸し主は、借り主が契約違反になっているといっても直ぐに契約解除、借り主に退去してもらうわけにはいきません。
賃貸借契約は、借り主が家主との信頼関係を失い、将来にわたって契約関係を維持することが困難となる場合です。従って軽微な違反は対象となりません。しかし、軽微であっても違反が繰り返される場合は契約解除となります。

貸し主は、契約解除をしようとする場合は、違反をみつけたらその事実を指摘し、その原因に基づいて契約解除をする旨を借り主に連絡する必要があります。
この場合、後日の証拠となるために内容証明、配達証明付の郵便で通知しておいた方が無難です。

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不動産個人取引支援のミドルプラス  最新更新2010/10/15

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